不足ミネラルだけ摂ってもだめ?~ミネラルの相互関係とは
ミネラルとは、カルシウム、鉄など人体が栄養として必要な微量元素の総称です。
無機質とも呼ばれ、現在40種類が知られています。
三大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質)と比べると、ミネラルは何十分の一、何百分の一しか必要としませんが、わずかな量でも人間の体内で大きな働きをするため、重要な栄養素といえます。
ミネラルの役割
ミネラルの役割は、大きく分けてふたつ。
カラダの構成成分となる
代表例として、
カルシウムは骨や歯の成分となり、鉄は血液中の赤血球の成分となります。
カラダの機能を整える
たとえば、怪我をしても出血が自然に止まる、血液が極端なアルカリ性に傾かないようにする、たんぱく質や糖質の体内での利用を助けるなど、たくさんの働きをしています。
適量摂取の原則
三大栄養素のサポート役として重要な役割を担うミネラル。
各ミネラルごとに最適な摂取量があり、多すぎても少なすぎても体に不調を来す要因となり得ます。
私たちが成長し、健康な生活を維持するためには、ミネラルを過不足なく摂取する必要があります。
ミネラルには相互関係がありますので、それぞれのミネラルをバランスよくとるように心がけましょう。
微量ミネラルの相互関係
ミネラルは単体で働くものではなく、相互に影響し合っています。
不足しているミネラル単体だけを摂取しても良い働きはできません。
相互関係にあるミネラルやビタミンなどの栄養素も一緒に摂取する必要があります。
また、同時に摂取すると吸収を阻害してしまうミネラルもあるため、相互関係を理解し、正しく摂取していきましょう。
有害ミネラル 排出に必要な栄養素
◆水銀
カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE
◆アルミニウム
カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンC
◆鉛
カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE
◆砒素
カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、セレニウム、モリブデン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE
必須ミネラル 他の栄養素との相互関係
◆ナトリウム
過剰摂取状態が続くと、他栄養素の吸収を妨げてしまいます。
◆カリウム
ナトリウムの排出を促します。
カリウム、カルシウム、マグネシウムをバランスよく摂取すると特に効果的です。
◆マグネシウム
カルシウムと拮抗関係にあり、カルシウムを多量に摂取するとマグネシウム不足となる可能性があります。一般的な摂取比率の目安は、マグネシウム1に対しカルシウム2です。
◆カルシウム
ビタミンDと一緒に摂取すると吸収が促進されます。
また、リンの摂取量との関係が深く、カルシウム:リンの比率が1:2~2:1の間で最も吸収率が良いと言われています。その範囲を超えてリンを摂取してしまうとカルシウムの吸収が悪くなってしまいます。
リンは加工品などに含まれているため、知らず知らずの間にリンを摂取してしまい、カルシウム不足になってしまう事も考えられます。
◆モリブデン
モリブデンを過剰に摂取すると銅の吸収を阻害する作用があります。
鉄の利用を高めるため、貧血の予防作用が期待されます。モリブデンによる貧血の予防の効果は、鉄が体の中で使用される際の酵素の構成成分となっているためです。
◆マンガン
カルシウムやリンと共に骨の形成に役立ちます。
マンガンの吸収は鉄と競合するため、食事中の鉄の含有量が高いとマンガンは吸収されにくくなるという関係があります。
◆鉄
銅、ビタミンC、タンパク質と一緒に摂取すると吸収されやすくなります。
クエン酸やリンゴ酸も鉄分の吸収を促進します。
鉄には非ヘム鉄(主に野菜類など植物性食品に含まれる)とヘム鉄(主に肉類など動物性食品に含まれる)があり、
非ヘム鉄はヘム鉄と比べ吸収率が低いですが、非ヘム鉄とヘム鉄を一緒に摂取する事で吸収率がUPします。
また、お茶などに含まれるタンニンは鉄分の吸収を阻害してしまいますので、注意が必要です。
◆銅
鉄の吸収を助けます。
亜鉛と拮抗関係にあり、一緒に摂取すると銅の吸収が阻害されてしまいます。
◆亜鉛
タンパク質、クエン酸、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収が促進されます。
カルシウム、食物繊維、タンニン、フィチン酸、ポリリン酸などは亜鉛の吸収を阻害する栄養素です。
フィチン酸、ポリリン酸はインスタント食品に多く含まれるため、現代の食生活において、亜鉛は不足しやすい栄養素のひとつです。
◆リン
カルシウムの代謝と深く関係しています。
カルシウムの摂取量が低く、かつリンを過剰にとる食事を長期間続けた場合、骨量や骨密度が減る可能性があります。
リンは食品添加物として、加工食品に広く用いられているため、過剰摂取に注意する必要があります。
カルシウムとリンの摂取比は1~2が理想的とされますが、加工食品の利用が多くなった今日の日本では、摂取比が3になることが多いとされています。
また、ビタミンDの不足によりリンの利用を低下させることがあります。
◆セレニウム(セレン)
亜鉛と拮抗関係にあるため、亜鉛を多く摂取するとセレニウムの吸収が阻害される要因となり得ます。